ギターのポットについて詳しく解説!【ジャズマスター改造記②】

 どうも、hechiMa(@hechiMastar)です。前回に引き続き、ジャズマスター改造記をお届けします。今回は、ギターのボリュームやトーンに使われるポットについて解説します。見た目は小さな部品ですが、抵抗値やカーブ、スムーステーパーなど、多くのカスタマイズができます。ですので、思い通りのサウンドに近づけたいという方はぜひご一読ください。それではいきましょう!

https://www.yosguitars.com/ より引用

ポットの抵抗値について

 ポットの抵抗値にはいろいろな種類が存在します。抵抗値が大きいほど低音域をカットし、高音域を強調する性質があり、ピックアップによって使い分けられます。ここでは4種類ほど紹介します。

  • 250kΩ:主にシングルコイル・ピックアップに使用される。最も一般的。
     シングルコイルではハイがよく出るため、抵抗値を小さくして音色をマイルドにする。
  • 300kΩ:主にP-90・ピックアップに使用される。
     P-90はシングルコイルとハムバッカーの中間にあたるため抵抗値もその間をとる。
  • 500kΩ:主にハムバッカー・ピックアップに使用される。
     ハムバッカーではハイが落ちるため、抵抗値を大きくして音抜けを良くする。
  • 1MΩ:主にジャズマスター・ピックアップに使用される。
     ジャズマスター・ピックアップ特有のレンジが広いサウンドを生かすために使われる。

 他にも、アクティブ・ピックアップ用には25kΩのポットが使われています。
「そもそもどんなピックアップがあるの?」という方はこちらを参考にしてください。外部の記事ですが、とても分かりやすく書かれているのでおすすめです。

 一般的に、ボリュームとトーンには同じ抵抗値のポットが用いられます。ですが例外もあります。例えば、ジャズマスターのプリセットコントロール。ボリュームポットは1MΩですが、トーンポットは50kΩです。トーンに関しては、ポットの抵抗値が大きいほど高音域をより多く削る性質があるので、プリセットスイッチをオンにすると少しサウンドがモコモコします。

ボリュームポット:抵抗値が大きいほど高音域が強調される
トーンポット:抵抗値が大きいほど高音域が減衰される

 ここまで抵抗値の違いによるサウンドへの影響を紹介してきましたが、必ずしも一般的な値にしなければならないわけではないので、お好きな値をお試しください!

ポットのカーブについて

 ポットを回したときの抵抗値の変化の仕方には種類があります。ボリュームを頻繁に操作するギタリストには、カーブ選びも重要になってきます。ここで紹介するのは、AカーブBカーブの2種類。以下にその図を示します。

https://ameblo.jp/mar-bow-guitar/entry-11977903895.html より引用

 図のように、抵抗値の変化にはカーブによって以下のような特徴があります。

  • Aカーブ:最初は緩やかに、途中から急激に抵抗値が大きくなる
  • Bカーブ:目盛りに対して均一に抵抗値が大きくなる

 ここまで抵抗値の変化を解説しましたが、抵抗値の変化具合と実際の聴感上の音量の変化具合は異なります。聴感上の変化具合は”逆”になると思ってもらえれば大丈夫です。

 一般的には、ボリュームにはAカーブ、トーンにはBカーブが使われています。ですが、こちらは例外も多いです。ジャズマスターのマスターコントロールでは、トーンがAカーブ、ボリュームがBカーブと、一般的な設計とは逆のカーブが使われているのです。開発者レオ・フェンダーのこだわりが伺えます。
 このように、自由にいろいろと試すことが可能です。特徴をまとめると以下のようになります。

Aカーブ:自然に音量が大きくなる。ボリュームポットに使われる。
Bカーブ:初めは緩やかに、途中で急激に音量が大きくなる。トーンポットに使われる

 なお、他にはCカーブ、Dカーブのポットが存在します。Cカーブでは初めは急激に、途中から緩やかに抵抗値が大きくなります。Aカーブの逆の特性を持つということです。DカーブではAカーブより激しく抵抗値が変化します。極端なカーブが必要な場合にしか使いません。
 以上の理由より、CカーブとDカーブはどちらも使い勝手が良くないため、ギターにはあまり使われていません。

スムーステーパーについて

 ボリュームを頻繁に操作するギタリストにとっての大きな悩み。それがハイ落ちです。ハイ落ちとは、その名の通りボリュームの目盛りを小さくすると音量に対して過剰に高音域が減衰される現象のこと。バッキングではボリュームを7、ギターソロではボリュームを10、といったように使う人にとっては、バッキングでの音抜けが悪くなってしまうため致命的ですね。

 このハイ落ちを防ぐ方法としてコンデンサをボリュームポットに接続するという方法があります。コンデンサの「高音域を通過させる」という性質を利用したものです。この配線はスムーステーパートレブルブリードと呼ばれます。その接続には以下のような種類があります。

draw.io にて作成 (2022/1/22)

 図のように、スムーステーパーには3種類の接続方法があります。以下にまとめます。

  • (i) Simple:①と②の間にコンデンサのみを並列に接続する
  • (ii) Duncan:①と②の間に抵抗とコンデンサを並列に接続する
  • (iii) Kinman:①と②の間に抵抗を直列コンデンサを並列に接続する

 ボリュームポットのデフォルトの配線を忘れてしまったという方は前回の記事をご覧ください。

 コンデンサを並列につないだだけ(“Simple”の配線)では、ボリュームを絞った際”高音域だけ”が残ってしまうという印象が強いです。そのため、それを補正するために抵抗が接続されます。並列(“Duncan”の配線)よりも直列(“Kinman”の配線)のほうが補正が大きく、低音域が自然に減衰します。まとめると以下のようになります。

ハイパスコンデンサの接続方法は3種類存在する。音質の変化が少なく、自然に音量を変化させることができる順に並べると Kinman ⇒ Duncan ⇒ Simple となる。

 配線の違いによるハイパスのかかり具合の変わり方が非常に分かりやすい動画を見つけました。参考までに貼っておきます。

accordoTV様 より引用(2020/2/8)

静電容量と抵抗値でさらにカスタマイズ

 勘のいい方はお気づきかもしれませんが、スムーステーパー化の配線をするにあたって、ハイパス用コンデンサの静電容量や補正用の抵抗の値はサウンドを決める大事なポイントになります。使用するピックアップやボリュームポットの抵抗値などで適した値は違ってくるのですが、一般的には以下のような値が使われています。

  • 静電容量:200pF〜910pFの間で使われる。
     容量が大きいほどパスする音域が広くなるため、ローやミドルも残るようになる。
     容量が小さいほどパスする音域がハイに寄るため、ハイのみが残るようになる。
  • 抵抗値:240kΩ~910kΩの間で使われる。
     抵抗値が大きいほどコンデンサの効きが強くなり、ハイのみが残るようになる。
     抵抗値が小さいほどコンデンサの効きがマイルドになり、ローやミドルも残るようになる。

 なお、抵抗値はボリュームポットよりも少し低めがよいと言われていますが、実際にはポットの半分ぐらいで使われることが多いです。メーカーによってさまざまな種類の既製品が発売されており正解はないので、時間と予算の許す限りたくさんのパターンを試してみることをお勧めします。

大きな効果静電容量=小、抵抗値=大
小さな効果
静電容量=大、抵抗値=小

デメリットもお忘れなく

 ここまでスムーステーパー化のメリットを解説してきましたが、この改造にはデメリットもあります。それは歪み量の操作が難しくなるということです。ボリュームを絞った時、どうしても不自然に高音域だけが残ってしまうため、音を歪ませている場合、歪みの質自体が変わってしまいます。そのため、ファズのようにボリュームでクリーンからファズサウンドまでを操作したい人など、歪みサウンドを主に扱うギタリストにとってはむしろ音が悪くなったと感じてしまうかもしれません。

 逆に言えば、クリーンサウンドを主に扱うギタリストにとっては最適な改造と言えます。ボリュームを絞った際、高音域を落とさずにきらびやかなクリーントーンを出すことができるからです。

 さてデメリットを紹介しましたが、いずれの場合も静電容量や抵抗値によって多少のカスタマイズが可能です。スムーステーパー化の効果が大きいほど歪み量の操作が難しくなります。スムーステーパー化においては、これらメリットとデメリットのバランスを考える必要があるのです。

スムーステーパー化には歪み量の操作が難しくなるというデメリットがある。
メリットとデメリットのバランスを考えて改造しよう。

トーンポットにおけるコンデンサについて

 さて、ここではトーンポットのコンデンサについて解説します。ボリュームポットのカスタマイズに比べ、違いが分かりやすいのでこちらもカスタマイズしてみてはいかがでしょうか。

https://www.shimamura.co.jp/ より引用

静電容量でカスタマイズ

 まず注目するのはコンデンサの静電容量です。トーンポットにおいては、コンデンサはアースに接続されています。ですので、コンデンサの静電容量が大きいほど、アースに落とせる音域が広くなるため、よりモコモコしたサウンドになります。この性質を生かして、搭載されているピックアップに適した容量のコンデンサを使うのが一般的です。ここでは3種類紹介します。

  • 473(0.047μF):主にシングルコイル・ピックアップに使用される。
  • 233(0.023μF):主にハムバッカー・ピックアップに使用される。
  • 333(0.033μF):主にP-90 及び ジャズマスター・ピックアップに使用される。

 他にもアクティブ・ピックアップには104(0.1μF)が一般的に使われています。

材質でカスタマイズ

 次に注目するのはコンデンサの材質です。静電容量ほど変えた際の違いは分かりにくいですが、それぞれの材質に特徴があります。ここでは4種類ほど紹介します。

  • セラミック:Fenderなどで一般的に使用されるコンデンサ。音質は硬めで明るく、乾いている。
  • フィルム:バンブルビーやオレンジドロップなど、アップグレードのスタンダード。音質はかなりまろやかで、中域にピークがある。
  • オイル:Vitamin Qなどに代表されるコンデンサ。音質は中低域が分厚く、艶やか。
  • ワックスペーパー:初期Fenderで使用されていたコンデンサ。音質は少しパリッとした印象。ビンテージ感。

 この他にもマイカなど、様々な種類のコンデンサが存在します。完全に沼ですね。

 さて、この記事を書くにあたって様々な比較動画を見ましたが、筆者は”そこまで音質変わらなくないか?”という印象を持ちました。もちろん、カスコンと言われる廉価版のフィルムコンデンサと、有名とされるコンデンサには雲泥の差があります。しかし、一般的に発売されているコンデンサの中ではほとんど差が無い印象でした(もちろん筆者の耳がカスなだけかもしれませんが)。
 一応、その中でも筆者が気に入ったのはVitamin Qです。今所有しているジャズマスターに使われているから、というのもあるでしょうが、艶やかでリッチなサウンドが好みです。

 なお、比較をするにあたって一番役に立った動画はこちらです。動画では、そのコンデンサのスペックが(フィルム/50VDC)というように書かれていますが、この「50VDC」というのは”耐圧”を表しています。一般的に、耐圧は大きいほどワイドレンジでリッチなサウンドになるという傾向を持っています。それも含め、ぜひお気に入りのコンデンサを見つけてください。

まとめ

 今回はポットのカスタマイズについてお届けしました。とても奥が深いということがお分かりいただけたかと思います。入ったが最後、そこには抜け出せない沼が待っています。あまり値段をかけずに改造ができ、サウンドの違いも感じられるので、初めての改造におすすめです。さぁあなたもぜひこちら側へ…どうですか?

 次回はいよいよジャズマスターの配線に入っていきます。お楽しみに。

hechiMaのYouTubeチャンネルでは、弾いてみた動画、TAB譜動画を発信しています。
気になった方はぜひご覧の上、チャンネル登録をよろしくお願いします!

SNSでシェアしてね!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です