ここは来年以降に期待!ちょっと辛口
ここまでは割といいとこばかり言ってきました。ここからは他社のスマートフォンや、期待されていたけど実装されなかったものに触れながらちょっと辛口評価で行こうと思います。
私が考える範囲で iPhone 13 シリーズへの不満は
- Touch ID(指紋認証)非搭載
- TrueDepthカメラの仕様
- 端子はLightning続投
- micro SD は使えない
- LiDARセンサー搭載はProシリーズのみ
- 日本国内では5Gミリ波通信に非対応
- MagSafeの仕様
- Bluetooth バージョンは 5.0
- LDAC や aptX系 の高音質コーデックの対応はなし
- イヤホンジャックなし
が主なところでしょう。
個人的にメモリを増やして欲しいという気持ちもありますが、そもそもスマートフォンでメモリ不足になることはほぼない上に、それで値段が上がっても困るのでここでは触れません。
Touch ID搭載 と Face ID改善

まず、1.と 2. についてです。2021年現在、世界的な新型コロナウイルスの流行により外出時はマスクをつけることが実質義務となっています。iPhoneシリーズは iPhone SE を除いて Face ID が採用されていますから、屋外ではパスコードでロック解除するかSeries 3 以降のApple Watchをつける必要があります。
そこで望まれていたのが、電源ボタン型Touch IDの搭載とTrueDepthカメラの仕様変更・精度アップでした。ちなみにTrueDepthカメラとは、インカメラやFace ID用センサーを含むセンサー群をまとめた呼称です。
Touch IDがあればApple Watchをつけていなくてもロック解除できますし、TrueDepthカメラの仕様と精度が改善されれば、Windows Helloのようにマスクを着けたままのロック解除や双子の識別精度アップも期待できます。
高専生としてはTrueDepthカメラで得られた顔の立体情報はいろいろな応用が利くのでTouch IDとTrueDepthカメラを両方搭載してもらえると嬉しいですね。
Lightningとmicro SD非対応の呪縛
「入れたいアプリが入れられない」、「写真や動画が保存できない」といった問題を解決する micro SD カード。しかし、iPhone は micro SD非対応、、、、
ストレージ最小モデルしか買えない・買ってもらえない学生にとって、それは悩みの種となっていました。iPhone 13 シリーズで容量を倍増させたり、選択肢を増やしたとはいえ他社より高いことには変わりないですからね。
また、 Lightning端子・ケーブルに関してはAndroid派のみならずApple信者やAppleファンからもバッシングの的となってきました。
Lightningが嫌われる理由、それは USB Type-C のケーブルに比べ高価なことと、転送速度が遅いことでしょう。Apple純正のLightningケーブル(1メートル)の値段は1980円と同仕様の USB Type-C と比べて数倍高価です。
これには訳がありまして、実は多くのLightningケーブルにはAppleから出荷されたチップが入っています。このチップを使うには、チップを仕入れてさらにAppleに対してライセンス料を払う必要があるので、その分値段が高くなってしまっているわけです。
このチップを使い、ライセンス料を支払って作られた製品には Made for iPhone と製品に表示することが出来ます(MFi認証)。この条件を満たさない製品を使った際には警告が表示されたり、誤った制御で発火する危険性があるので、ケーブルを作る企業はAppleからチップを仕入れてライセンス料を払う必要があるのです。

また、Lightning は iPhoneで使用した場合 USB2.0 の通信となります。それは接続するパソコンがより速いUSB 3.2 Gen 2×2 等に対応していてもです。これは iPhone で撮った動画や写真をパソコンに移動させるときにボトルネックとなります。今回の ProRes対応で撮れるようになった綺麗な映像をパソコンで使いにくいというのは残念ですね。本当に Lightning、、、、
iPhone 13 はLiDAR非搭載、全機種5Gミリ波非対応
今回 iPhone 13 に搭載が期待されていたLiDARセンサーは非搭載、Proシリーズのみとなりました。LiDARセンサーとは光が行って帰ってくるまでの時間を測定して物までの距離を計測するセンサーです。
これがあれば空間の立体情報が得られるので、より高度なAR(拡張現実)や3Dモデルの作成ができます。これは高専生的に欲しかったのですが、来年度に期待です。
そしてスマートフォンとして搭載が最も望まれていたといってもいい5Gミリ波通信。わからない人のために説明しておくと、最近話題の5Gにも大きく分けて2種類ありまして、ミリ波通信というのはより高速な通信です。
最近は他社のハイエンドで採用が進んでいるので、ハイエンドを名乗るなら欲しかったところ。日本では普及範囲がまだ狭いので実害はまだ無いかもしれませんが、今後、2,3年は使う予定がある人にとっては残念です。アメリカ国内のモデルはミリ波が使えるらしいので、国内でも対応してほしかったですね。
MagSafe は正直微妙(主観)
去年 iPhone に追加された新機能、MagSafe 。個人的には面白い機能です。専用財布を落とした場所がわかったり、磁石でいろいろ引っ付いて便利だったり。でも大きな問題が、熱くて充電速度が遅いんです。
これが何を意味するか分かりますか?つまり熱の分だけエネルギーをロスしているということなんです。モバイルバッテリーから充電するとき、有線で充電すれば発熱を抑えることが出来ます。しかしMagSafeの場合、発熱分だけ充電できる量が減ってしまいます。
しかも純正MagSafe充電器は5000円と高いのに、他社製は意図的に充電速度が半分(7.5W)に制限されています。あと、MagSafe を使うには MagSafe対応のケースが必要です。
確かに有線イヤホンをつけながら充電できるのは大きいですが、そんなにお金かかるならワイヤレスイヤホンを買ったほうがいいような気もしてしまいます。
発熱と充電速度の改善、社外品の充電速度制限の撤廃、低価格化、そして結構気になる充電器の大きさを小さく、これが私の願いです。わがままですみません。
Bluetooth が最新じゃない!? なのにコーデックも

そして私が個人的に気になるのはBluetoothのバージョンが古い点とLDACやaptX系の高音質コーデックに非対応という点です。近年ワイヤレスイヤホンの需要が高まるなか、これはユーザーにとって結構痛いのではと思ってしまいます。しかもイヤホンジャックがなく、有線イヤホンでは専用アダプタが必要なのにも関わらずです。
ワイヤレスイヤホン市場はここ数年で急速に発展しました。そのワイヤレスイヤホンに音楽を転送するときにはBluetoothという規格が使われます。
そしてBluetoothのバージョンというのはワイヤレスイヤホンの音質に影響しない。今まではそれが常識でした。しかし2020年に発表されたBluetooth 5.2からは違います。それはLE Audioが実装されたからです。
LE Audioという言葉を聞きなれない人もまだ多いかと思いますので説明しておきましょう。LE Audio というのはその名の通りオーディオに関する機能で、簡単に言えば少ないエネルギーで高音質な音楽を転送できるようになったということです。しかもBluetooth 5.2以降でLE Audio対応なら標準でこうした機能が使えます(スマホとイヤホン両方の対応が必要)。他にもいろいろな機能がありますが、この話は細かいのでまた今度詳しく記事にしましょう。
話を戻すとBluetooth 5.2で追加されたLE Audioはワイヤレスイヤホンの長時間再生と高音質化につながります。しかし残念ながらiPhone 13 シリーズではBluetooth 5.0を採用。もともと iPhoneではLDACやaptX系の高音質コーデックに非対応ですから、せっかくワイヤレスイヤホン側が対応していても高音質の再生ができないことが短所でした。
そんな中、Bluetooth 5.2とLE Audioに対応すれば、LE Audio対応のイヤホンと組み合わせることで高音質での再生ができるようになると期待されていただけに少々残念ではあります。今年(2021年)に入って廉価帯のスマホでもBluetooth 5.2とLE Audioに対応した機種が出ていたので、Appleも載せてくるだろうと踏んでいたのですが、当てが外れました。
まだ市場にはBluetooth 5.2かつLE Audioを採用したイヤホンが少ないので今は問題ないですが、今後対応イヤホンが出てきたとき、その真価を発揮できないのは残念ですね。そのほかにも複数同時転送やBluetooth 5.1で実装された方向探知機能などが使えないのも気になります。
こんな思惑も?Appleの裏事情と思惑を分析!
ここまでは製品自体の仕様に触れてきました。ここからは新製品の裏に見えた Apple の裏事情と思惑を分析していきたいと思います。
自らを高みへと追いつめるブランド意識
ブランドというのは一種の諸刃の剣です。ブランド価値を高めることで一定の顧客を取り込み、高価格で商品を販売できますが、同時に他社より高い品質を求められるのです。
そんな過酷なブランド意識の中に身を置くApple。以前は競合のAndroidのレベルが低く、自社の企業努力も相まって圧倒的な支持を得てきました。しかし近年 Android OS の完成度が向上するにつれ、以前のようなリードを保つためにはより一層開発を加速させる必要が出てきました。
また、後に説明するようにスマートフォン全体は徐々に完成されてきています。それにより、各社カメラ機能の強化やディスプレイの改善、処理性能の向上など変化の方向性が限られてきてしまいました。それは他社に大きな差をつけなくてはならないAppleにとってはキツい展開です。
そんな中でもクオリティーの差を保つAppleの裏には並々ならぬ企業努力があってこそなのだと私は思います。
micro SD に見る”わかりにくさ”と”セキュリティ”
先ほど Android 派の皆さんに向けて 「micro SD を搭載しないのには理由がある」、「野暮なことは言うな」といいました。その根拠をお話ししましょう。
何度も言うようですが、iPhoneシリーズは micro SD 非対応です。それにはもちろん大容量のモデルを買ってほしいという理由もあるでしょう。しかし、私が思うに理由は2つ、Appleは”わかりにくさ”を嫌うということとセキュリティ問題でしょう。
詳しく説明しましょう。ご存じの方もいると思いますが、micro SDカードにはたくさんの種類があり、さらに製品ごとにスピードや耐久性が違います。それを知らない人が安くてスピードの遅い micro SDカードをスマートフォンに挿入したらどうなるでしょうか。
高画質な動画や写真を撮影したとき、書き込み速度がボトルネックになり、動作がもたつくかもしれません。また、データが破損する可能性もあります。しかし、それがmicro SDカードのせいだと知らない人はスマートフォンの故障だと思うかもしれません。
また、それを紛失したとき、中のデータはどうなるでしょうか?今は暗号化して保存が可能ですが、それを知らない人が暗号化しているとは限りません。スマートフォンにセキュリティの欠陥があったと考えるかもしれません。それらは製品のイメージダウンにつながります。
いまや誰もが持っているスマートフォン。知識がない人でも使うということは誤解を招くものは排除しなくてはなりません。その誤解がきっかけで製品のイメージダウンや訴訟を招けば、“わかりやすさ”とブランドを売りにするiPhoneにとって大ダメージですからね。
これが私が推測する iPhone に micro SD を搭載しない理由です。
スマートフォンはほとんど完成されてしまった
今回の製品たちを見て、皆さんはどう思いましたか?この長い記事をここまで読んでくれた方なら気が付くと思います。今回のiPhone、意外と注目する場所が多いんです。これはAppleが頑張って改善できる場所を探したからだと思います。
しかし、世間からの評価はどうでしょうか?発表後、今回のiPhoneは見送るという声がいつもより多かったように感じます。確かに、今回の発表もカメラが進化したとひとくくりにすれば、インパクトが薄いというのは確かでしょう。
去年のiPhoneのディスプレイに不満を持ったという人は少ないでしょうし、そのほかの進化も他社と同程度であることには変わりありません。カメラの機能性では他社を一歩リードしている感じはしますが、それだけで買い替えるかといわれると微妙です。
しかし、これは Appleが悪いわけではありません。それはスマートフォン市場が成熟してきたからです。これまでスマートフォンは新しい市場でした。しかし、広くスマートフォンが認知されるようになってからもうすでに約10年が経った今、残された進化は残りわずかです。
恐らく消費者が望むのは今までなかった実用的かつ革新的な機能でしょう。ですが、残念ながらスマートフォンという枠の中では限界が来ています。スマートウォッチとの連携を図るなど、スマートフォンの外側に進化を求めるようになって来たのです。
私たちを取り囲むデバイス、その中心にあったのはスマートフォンでした。そして今後数年の間はその状況が続くことでしょう。しかし、今後生活の中心となるような新たなデバイスが出現したとき、今まで培ってきたノウハウがどのように生かされるのか。そんな視点で企業や製品を見つめてみると、また一歩、真のガジェットマニアに近づくのではないでしょうか。
まとめ ~iPhone 13シリーズ~
ここまで記事を読んでくれた皆さん、本当にありがとうございます。ここまでが長すぎたので、手短に行きますね(笑)。
皆さんどうでしたでしょうか?私個人としては製品の裏に Apple の事情が垣間見れて面白かったなと思います。果たしてiPhone 13 シリーズの売り上げはどうなるのでしょうか。それによっては今後のAppleが大きく変わるかもしれないと感じます。
さて、次回の第3弾は iPad mini についての記事を予定しています。今回は触れなかったA15チップの裏話についても詳しく見ていきたいと思いますので、ぜひご覧ください!お読みいただきありがとうございました!
第3弾の記事が出ました!iPadシリーズが気になる人はぜひ!
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