ハムバッカーの音が出せる?シリーズ配線の仕組みを解説!【ジャズマスター改造記④】

 どうも、hechiMa(@hechiMastar)です。ジャズマスター改造記もついに4回目となりました。今回からついに具体的な改造内容について解説していきます。理論編と作業編に分けてお送りします。今回は理論編ということで少し複雑な配線も出てきて難しくなってきますが、ここまでの記事が理解できたあなたなら楽勝です。配線図は自由にダウンロードしていただき、ご自分のギターの改造にぜひ利用してしてくださいね。それではいきましょう!

改造後のジャズマスター。スイッチが2つほど増設されている。

改造の内容

 今回、hechiMaが行った改造は以下の3点になります。

  • プリセットスイッチをシリーズ配線のオンオフ切替スイッチにする。
  • プリセットコントロールを2つ目のマスターコントロールとする。
  • キルスイッチを実装する。

 それぞれの改造を行った理由について説明します。配線だけ見たいという方は目次から次の章まで飛んでください。

プリセットスイッチとプリセットコントロール。ここを主に改造していくぞ。

プリセットスイッチをシリーズ配線のオンオフ切替スイッチにした理由

 ジャズマスターは見た目、サウンドともに本当に大好きなギターなのですが、日本製のジャズマスターには「ハイ(高音)が刺さる」傾向があり、私のジャズマスターもその例外ではありませんでした。ピックアップがシングルコイルのためどうしても音が細く、「もっと太い音が出せたらいいのになぁ」と思うときもしばしばありました。

 そこでシリーズ配線の登場です。シリーズ配線とは直列接続のことで、リアピックアップから直列にフロントピックアップをつなぐ配線のことを指します。これによって、シングルコイルを2つ直列につなぎ1つのピックアップとしているハムバッカーピックアップに似たサウンドを出すことができます。ハムバッカーと言えば、パワフルで甘く太いサウンドが特徴。シリーズ配線をすることで、私のジャズマスターが苦手とする音を出すことができるようになるわけです。これが1つ目の改造を行った理由です。

プリセットコントロールを2つ目のマスターコントロールにした理由

 では次はプリセットコントロールをどのように利用するかについてです。上述したシリーズ配線化の改造を行うと、プリセットコントロールが必要なくなってしまうため(後述)、2つ目のマスターコントロールとして利用できるようにしました。こうすれば、トーンポットの抵抗値が大きいと抜けのいい音、小さいと甘く太い音が出るという特徴を生かして2種類のサウンドバリエーションが楽しめると思ったのです。具体的には、シリーズ配線から出力される音を含め、全ての音を既存のマスターコントロールと、(プリセットコントロールを流用することで)新しく増設した2つ目のマスターコントロールの2通りの方法で調整できるようにしました。

 まとめると、今回の改造によって以下のようなピックアップの選択パターンが得られるようになります。

  • リア
  • リア+フロントのミックス(並列)
  • フロント
  • リア+フロントのシリーズ配線(直列)

 この4パターンを2種類のマスターコントロールで調節するため、音色としては4×2=8パターンの音色が得られます。改造以前はマスターコントロールでの「リアのみ、リアとフロントのミックス(並列)、フロントのみ」、プリセットコントロールでの「フロントのみ」の計4パターンだったため、単純計算で2倍の選択肢が選べるようになるわけですね。

 なお、この改造に際してボリュームポットをBカーブからAカーブに変更しています。2種類のマスターコントロールに違いを持たせるためです。サウンドとしてそこまでの変化はないため気分で改造してもらえばと思います。

キルスイッチを実装した理由

 最後にキルスイッチを実装した理由。これは単純で、ただスイッチング奏法をやってみたかったからです。スイッチング奏法とは、音をブツ切りにして「ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ……」というような音色を出す奏法のことです。レスポールのピックアップセレクターなどで行うことも多いこの奏法ですが、私はキルスイッチを利用することにしました。具体的には、キルスイッチを押している際は信号がグランドに逃げるように配線します(後述)。まぁこの奏法を実際に行っている曲などはあまり知らないのですが(ごめんなさい)、定番の改造ともされているので、私も例に倣って実装することにしました。

 あとは好きなギタリスト(@tomo8now)の、キルスイッチを使った演奏がめちゃくちゃかっこいいというのも大きな理由です。頻繁にYouTubeにて配信も行っているので気になった方は見てみてください。この記事までたどり着く人は既にご存じかもしれませんけどねw

tomohachiのアルペジオを効果的に使ったプレイスタイルは本当にかっこよくて大好きです。
動画はキルスイッチを使うタイミングで始まるようにしてあります。

 以上が、それぞれの改造を行った理由です。ここからは実際にこれらの改造を実現するための配線について解説していきます。

配線の解説

 まずは、改造後の全体の配線図をご覧ください。仕組みは分からなくてもいい、という方はこの配線図をダウンロードしてすぐ改造に取り掛かってもらって大丈夫です。作業の際は画像の左右反転をお忘れなく。以降でそれぞれの改造箇所について詳しく解説します。

draw.io にて作成(2022/2/5)
※ボリュームポットの配線に間違いがありましたので訂正しました(2022/5/26)

 写真を見ていただければわかる通り、下側にDPDTKill SWが追加されています。上側のDPDTも何やら配線が交差していますね。それぞれどんな意味を持つのか、見ていきましょう。

シリーズ配線化の仕組み

 シリーズ配線化の肝は、上側のDPDTです。ここに注目して、シリーズ配線をオフにした場合、オンにした場合の2パターンで解説します。

シリーズ配線”オフ”時の配線。draw.io にて作成(2022/2/5)
※ボリュームポットの配線に間違いがありましたので訂正しました(2022/5/26)
  1. リアピックアップからの信号が上側のDPDTまで送られる。
  2. フロント、リアそれぞれのピックアップからの信号がピックアップセレクターまで送られる。
  3. ピックアップセレクターからの信号が下側のDPDTまで送られる。

 これがシリーズ配線”オフ”時の動作です。フロントピックアップのマイナス端子はDPDTを通してグランドにつながっています。割と分かりやすい配線かと思います。
 続いてはシリーズ配線”オン”のときの配線。少し複雑になりますよ。

シリーズ配線”オン”時の配線。draw.io にて作成(2022/2/5)
※ボリュームポットの配線に間違いがありましたので訂正しました(2022/5/26)
  1. リアピックアップからの信号が上側のDPDTを通してフロントピックアップのマイナス端子まで送られる。直列接続となる。
  2. 直列接続されたピックアップからの信号がピックアップセレクターまで送られる。
  3. その信号が上側のDPDTを通してピックアップセレクターのもう一つの端子に送られる。
  4. ピックアップセレクターからの信号が下側のDPDTまで送られる。

 これがシリーズ配線”オン”時の動作です。上側のDPDTにおいて、左上と右下の端子が斜めにつながっているところがポイントで、これによって直列接続が可能になっています。また、③の配線によって、ピックアップセレクターをどのポジションにした時も、シリーズ接続”オン”時のサウンドを出力することができるようになっています。

 以上がシリーズ配線化の仕組みです。筆者はこの配線を勉強した際、複雑で分かりにくいなぁと思いました。ですが以降の改造はこれよりも簡単な仕組みなので、ここまでが理解できた方は安心してくださいね。どんどんいきますよ。

プリセットコントロールを2つ目のマスターコントロールにする仕組み

 この改造の肝は下側のDPDTです。ここに注目して、(配線図を正面から見て)DPDTのスイッチが右側、左側の2パターンで解説していきます。

DPDTのスイッチを右側にしたとき。draw.io にて作成(2022/2/5)
※ボリュームポットの配線に間違いがありましたので訂正しました(2022/5/26)
  1. 下側のDPDTを通って、信号がマスターコントロールのボリュームポットまで送られる。
  2. マスターコントロール(ボリューム、トーン)で調整された信号が下側のDPDTを通ってキルスイッチまで送られる。

 DPDTのスイッチを右側にすると、上図のように、既存のマスターコントロールでサウンド調整ができるようになります。プリセットコントロールは触っても信号が導通していないため変化がありません。改造前のマスターコントロールと同様の動作をするということです。

 続いてDPDTのスイッチを左側にした時の配線図を下に示します。

DPDTのスイッチを左側にしたとき。draw.io にて作成(2022/2/5)
※ボリュームポットの配線に間違いがありましたので訂正しました(2022/5/26)
  1. 下側のDPDTを通って、信号がプリセットコントロールのトーンポットまで送られる。
  2. トーンポットで調整された信号がボリュームポットまで送られる。
  3. ボリュームポットで調整された信号が下側のDPDTを通ってキルスイッチまで送られる。

 DPDTのスイッチを左側にすると、上図のように、プリセットコントロールをあたかも2つ目のマスターコントロールのように使い、サウンド調整ができるようになります。1つ目のマスターコントロールは触っても信号が導通していないため変化がありません。なお、コントロール内での配線は少し異なっていますが動作は同じです。

 以上が、プリセットコントロールを2つ目のマスターコントロールにする仕組みです。片方のボリュームをゼロにしておけば、レスポールのようなスイッチング奏法をすることもできます。他にも、2種類のボリュームのバランスを事前にうまく調整しておくことで、エフェクターを踏まずともDPDTで音色の変更(クランチとドライブの切り替えなど)が可能です。非常に便利ですね。

キルスイッチの仕組み

 では最後に、キルスイッチの仕組みです。もうこれは最初の配線図から仕組みが分かっている方も多いとは思いますが、念のためキルスイッチをオフにした時、オンにした時の2パターンで解説します。

キルスイッチが”オフ”のとき。draw.io にて作成(2022/2/5)
※ボリュームポットの配線に間違いがありましたので訂正しました(2022/5/26)

 キルスイッチがオフのときの配線が上図のようになります。これまでの長い道のりを経て、無事アウトプットジャックまで信号が送られました。おめでとう。

 それに対して、キルスイッチがオンのときはどうなるのでしょうか。もうお分かりですね。

キルスイッチが”オン”のとき。draw.io にて作成(2022/2/5)
※ボリュームポットの配線に間違いがありましたので訂正しました(2022/5/26)

 はい。せっかくの信号がすべてグランドに逃げてしまっていますね。押している時だけ信号がグランドに逃げる、つまり無音になるというのが、キルスイッチの仕組みなのです。至極単純ですね。

 この”押している時だけ”というのが重要で、スイッチのタイプ選びに関わってきます。スイッチのタイプはモーメンタリとオルタネイトの2種類に分けられるのですが、「モーメンタリ」というのがこの”押している時だけ”切り替わるスイッチです。一方、「オルタネイト」というのはスイッチを一度押すともう一度押すまで切り替わらないスイッチを指します。キルスイッチには「モーメンタリ」タイプのスイッチを使いましょう。

キルスイッチには”押している時だけ”切り替わる「モーメンタリ」タイプのスイッチを使おう。

まとめ

 ここまでお疲れさまでした。今回はジャズマスターの改造、理論編をお送りしました。この記事を最後まで読んだあなたは、かなりジャズマスターの配線に詳しくなっているはずです。ぜひオリジナルの配線アレンジを考え、自分のやりたい改造をしてみてはいかがでしょうか。コメントやDMにて改造報告、お待ちしております。

 次回は作業編です。実際に使用した工具や配線をした様子をお届けします。お楽しみに。

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