“弦高・オクターブ・ピックアップの高さ”の調節について解説!【ジャズマスターのメンテナンス③】

 どうも、hechiMa(@hechiMastar)です。今回でジャズマスターのメンテナンスはおしまいです。前回トレモロ調整までを行いましたので、今回は弦高・オクターブ・ピックアップの高さの調整という順番で紹介していきます。前回調整した箇所よりも演奏性、サウンドに大きく関わる調整となりますので、最近弾きにくいという方やサウンドが変わったという方は是非ご一読ください。それではいきましょう!

調整のたびにチューニングは忘れずに行おう。Galaxy A51 5G にて撮影(2022/2/20)

弦高調整

 はじめに行うのは”弦高調整”です。その名の通り弦の高さに関する調整なのですが、この場合の高さとはフレットから弦の距離のことです。弦高調整は、弦の”フレットからの高さ”を調整するために行うのです。具体的には、“サドルの高さ”を調整します。

その前に

 弦高調整による演奏面、サウンド面での変化を紹介します。

 演奏面では、フレットから弦が遠い、つまり弦高が高いと”弾きにくい”傾向になります。押弦に必要な力が大きくなるからです。反対に弦高が低いと押弦に必要な力が小さくなり、弾きやすくなります。これは速弾きなどテクニカルな演奏に最適です。

 サウンド面では、弦高が高いと音のハリとサスティーンが増し、情報量が増えます。反対に弦高が低いとサスティーンが減り、ビビりやすくなります。ですが音を深く歪ませると多少のビビりは気にならなくなるため、生音でビビるぐらい弦高を低くセッティングしている人もいます。

 このように、弦高調整は一長一短であり、正解などないのです。簡単に特徴をまとめておきます。

演奏面サウンド面
弦高を低くすると…弾きやすいサスティーンが減る
弦高を高くすると…弾きにくいサスティーンが増す

 しかし「弦高調整に正解はない」と言われても、実際に調整するとき初心者の方は戸惑いますよね。というわけで“一般的な”弦高をご紹介します。ここでの弦高とは、“12フレットから弦までの距離”のことです。

1弦側:1.7mm
6弦側:2.0mm

 これは“このぐらいのセッティングならオールジャンルに対応できる”という値です。ですが前回の記事で紹介したネックの状態や、指板のR(※後述)によっても適した弦高は異なってきます。この数値だけを信じず、自分の感覚に頼りながら調整してください。

Rとは…
 指板のカーブ
のこと。Radius(半径)の頭文字からとられている。小さいほど指板の曲がりがきつくなり、大きいほど指板が平らになる。ビンテージ仕様では184mm、モダン仕様では241mmが一般的。筆者のジャズマスターはRが小さめ。
 Rが小さい指板はコード弾き
Rが大きい指板は単音弾きに向いている。
 Rが小さい場合、弦高を下げるとチョーキング時に音づまりが発生しやすい。そのためRが大きいものに比べ弦高の下げ幅が小さい。

使用するもの

弦高調整に使う工具。Galaxy A51 5G にて撮影(2022/2/20)

 次に、弦高調整に使う工具を紹介します。六角レンチ弦高チェックゲージです。普通の定規を使用しても弦高は測定できるのですが、1mm単位でしか数値を把握することができません。より正確な測定のためには弦高チェックゲージの使用をお勧めします。

 使用している弦高チェックゲージは、“D’Addario / PW-SHG-01 String Height Gauge”です。安定のダダリオ製品です。上の写真のように、左・下側がインチ規格右・上側がミリ規格となっています。ここではミリ規格で話を進めるので、上部分を使います。0.25mm単位で目盛りがついているのが分かりますよね。

実際に調整する

Galaxy A51 5G にて撮影(2022/2/20)

 まず、弦高チェックゲージを使用して調整前の弦高を確認します。上の写真のように、フレット上に指板に垂直な向きでゲージを当てます。ななめにしてしまうと正しい数値が測れないため気を付けてください。

Galaxy A51 5G にて撮影(2022/2/20)

 次に、その数値に応じて弦高を調整します。そのために上の写真のように、サドルのイモネジを回します。締めれば弦高が下がり(時計回りに回す)、緩めれば弦高が上がります(反時計回りに回す)。各サドルに2か所のイモネジがあるので、サドルを斜めにすることも可能です。ジャズマスターはRがきつい傾向なので1弦用・6弦用などのサドルは斜めにするといいと思います。

 弦高調整する弦の順番ですが、おすすめは「1・6 ⇒ 23・4・5」です。端の弦の弦高を調整して、ビビらないか・チョーキングの際に音詰まりが無いかの2つを確認します。そして、端に合わせて内側の弦の弦高を調整していきます。この際、1弦から6弦に向けて弦高がなめらかに上がっていくようにしましょう。1つの弦だけ弦高がずれている、といった状況になると、演奏の際違和感を感じてしまうからです。筆者は少し音詰まりがあったため全体的に弦高を上げました。

弦高を調整したら、必ず毎回チューニングしてから演奏感を確認しましょう。

分かりやすくするためゲージを斜めにしている。Galaxy A51 5G にて撮影(2022/2/20)

 上の写真のように、hechiMaのジャズマスターの弦高は“1弦:1.75mm、6弦:2.25mm”となりました。「弦高は違和感ないのにこの弦だけ音がビビるんだよな…」というときは、ネックがねじれているかもしれません。個人での調整は諦めてリペアショップに出しましょう。筆者は幸いこのような症状に出会うことはなく、弦高調整を終えることができました。

オクターブチューニング

 次に、オクターブチューニングに入ります。オクターブチューニングとは、0フレット(開放音)と、12フレット(1オクターブ上の音)の音程を合わせる作業のことです。これにより、コードを弾いた時の違和感やハイフレットで弾いた時の音痴な感じをなくすことができます。ギターは正確な音程を出せるように設計されていない楽器ですが、この調整によってある程度補正することができるのです。具体的には、サドルを動かし、サドルとナットの距離を調整します

その前に

Galaxy A51 5G にて撮影(2022/1/11)

 上の画像をご覧ください。オクターブ調整用ネジが、弦と重なっているのが分かるでしょうか。このような状況ではギターを弾いた際、弦がオクターブ調整ネジに当たってしまい嫌な高音が鳴ってしまいます。これでは楽しく弾けません。

Galaxy A51 5G にて撮影(2022/1/16)

 というわけで前回の記事に引き続き、ネジ交換のすゝめです。上の画像のように、ネジを短くすればいいのです。こうすれば問題なくギターを演奏できます。具体的なネジのスペックについては後述します。

Galaxy A51 5G にて撮影(2022/1/16)

 ついでと言っては何ですがネジ交換の際、通常の十字頭ではなく、上の写真のように六角頭のネジを選びました。ジャズマスターではサドルからテールピース間の弦が邪魔でかなりオクターブ調整ネジを回しづらかったため、やむなくオフセットドライバーを使用していました。しかしそれでもやはり回しづらく、トルクも掛けづらいので、「六角頭のネジに変えればいいじゃないか!」と思い付いたわけです。

使用するもの

Galaxy A51 5G にて撮影(2022/3/2)

 さて、ネジを交換するので今回の弦高調整に使うのは通常とは違います。六角レンチと六角頭付きネジです。ネジの規格は「M3×13」です。”13″の部分が長さであり、ここは使用しているギターに合わせてご自由に変えていただいて大丈夫です。

実際に調整する

Galaxy A51 5G にて撮影(2022/2/20)

 では、実際に調整していきましょう。まず、12フレットの上に”軽く触れて”、ナチュラルハーモニクス音を出し、音の高さを確認します。ナチュラルハーモニクスについては詳しく書きませんが、12フレットでは第2倍音が鳴りますので、開放音の1オクターブ上の音程になります。

Galaxy A51 5G にて撮影(2022/2/20)

 次に、12フレットを”押さえて”音の高さを確認します。ここで察した方、とても鋭いですね。そうです。この2つの音程を合わせるのがオクターブチューニングなのです。押さえた時の音を、軽く触れた時の音に合わせます。当然チューナーを使って正確に合わせていきます。

Galaxy A51 5G にて撮影(2022/2/20)

 音を高くすればいいのか、低くすればいいのか、どちらか分かったところでオクターブ調整ネジを回していきます。六角レンチを六角頭にしっかり差し込んで、回してください。サドルが動くのが目で分かります。どちらに回せばいいか、下にまとめましたのでご覧ください。

  • 「軽く触れたときの音」より「押さえたときの音」が低い
     ⇒オクターブ調整ネジを緩める (サドルがネックに近づく)
  • 「軽く触れたときの音」より「押さえたときの音」が高い
     ⇒オクターブ調整ネジを緩める (サドルがネックから遠ざかる)

 この作業を6弦分繰り返すとオクターブチューニングは完了です。かなり手間がかかりますが、これで音痴なギターではなくなります。根気強く行いましょう。

Aviutlにて作成(2022/3/2)

 「なぜこのような作業で音の高さが変わるのか?」については上の画像をご覧ください。要するに、中学の理科でやった輪ゴムの実験と同じです。いや、自分の学校ではやってません。先生が生徒とプロレスしてました。……話を戻します。これ以上詳しい説明は難しい、ということです。直感的に分かるようになるまで作業を繰り返すしかありません。

https://www.gekite2.com/archives/4187より引用(2022/3/2)

 目安としては、サドルは上の画像のような位置をとります。1弦から3弦まで下がっていき、4弦で少し上がってまた6弦まで下がっていくという感じです。なぜか?と聞かれると筆者にも分かりません。誰か知っている方がいましたらコメントお待ちしております。

 なお、6弦は基本オクターブチューニングが合いません。サドルを動かす幅に限界があるからです。こればかりはどうしようもないので、潔く諦めて、ご自分のギターを愛してください。「かわいいところもあるんだな…」と。

ピックアップの高さ調節

 では最後に、ピックアップの高さ調節を行います。これはすごく簡単で、ピックアップ固定ネジを回して”ピックアップと弦との距離”を調整する作業です。

Galaxy A51 5G にて撮影(2022/2/20)

 というわけで、使用する工具はプラスドライバーだけです。私が使用しているのは近くのコーナンで購入したドライバーセットに入っている0番のプラスドライバーです。何番のドライバーかは、使用しているギターの種類によって違うので、ドライバーセットの購入をお勧めします。なお、ドライバーセットに関してはダイソーはお勧めしません。十字穴を傷つけてしまう可能性がありますし、先端が磁化されていないからです。

Galaxy A51 5G にて撮影(2022/2/20)

 それでは、実際に作業していきましょう。上の写真のように、ネジを回してピックアップの高さを変えていきます。ネジを緩めれば上がり、締めれば下がります。ピックアップの下にスポンジが入っており、それがピックアップを押し上げているからです。ピックアップの位置が変えられなくなってきたら、スポンジがヘタっています。交換しましょう。

Galaxy A51 5G にて撮影(2022/2/20)

 調整後、上の写真のようになりました。弦とピックアップが平行になるようにしましょう。ボディとは斜めになると思います。高さの基準などはないですが、ピックアップセレクターのポジションを固定しないのであれば、フロントとリアの音量差がないように、耳で確認しながら調整してください。フロントピックアップの位置を上げると音がまろやかに、リアピックアップの位置を上げると音がギラギラします。微調整はお好みでどうぞ。参考までに筆者のピックアップの高さをまとめておきます。

hechiMaのジャズマスターのピックアップの高さは
フロント ⇒ ネック側:6mm、ブリッジ側:7mm
 リア  ⇒ ネック側:8mm、ブリッジ側:9mm

 これでジャズマスターの調整は完了です。お疲れさまでした。存分にギターを弾きまくりましょう。

ジャズマスター ネジまとめ

 さて、調整作業の解説中にもネジの交換について度々ご紹介しましたが、ここでジャズマスターに使われているネジの規格をまとめておきます。購入に利用したサイトは、”ねじNo1.com“です。合計11000円以下の購入の場合、550円の送料がかかりますので、まとめて購入するようにしましょう。

  • トレモロ土台固定ネジ
    ⇒丸皿頭 タッピンねじ(1種 A形):径3×20
  • トレモロ支点ネジ
    ⇒六角穴付きボタンボルト(ボタンキャップ):M4×30
  • ピックアップ固定ネジ
    ⇒不明。
  • ピックガード固定ネジ
    ⇒丸皿頭 タッピンねじ(1種 A形):径3×10
  • サドル固定ネジ
    ⇒六角穴付きボルト(キャップスクリュー):M3×13
  • プリセットコントロール固定ネジ
    ⇒丸皿頭 小ねじ:M3×8
  • プリセットスイッチ固定ネジ
    ⇒丸皿頭 小ねじ:M2.6×6

 ほとんどのジャズマスターにこの規格が合致すると思いますが、一部例外もあると思いますので必ず確認するようにしてください。ピックアップ固定ネジは探し続けているのですが全く見つからず、本当に苦戦しています。情報を持っている人はぜひコメントしてください。

最後に

 前回から2回に分けてジャズマスターの調整についてお送りしてきました。写真多めで分かりやすさを重視しましたが、いかがでしたでしょうか。調整作業は少し面倒ですが、ご自分のギターへの愛も深まります。少し練習に疲れたら、調整作業をしてみるのはいかがでしょうか。

 次回からはジャズマスターの改造第2弾をお届けします。お楽しみに。

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