MacBook Proを徹底解剖!?新チップと大幅仕様変更の結果は如何に!?

https://www.apple.com/jp/newsroom/2021/10/introducing-m1-pro-and-m1-max-the-most-powerful-chips-apple-has-ever-built/ より引用(2021/11/20)

新MacBook ProはどんなノートPC?

https://www.apple.com/jp/macbook-pro-14-and-16/specs/ より引用(2021/11/15)

 ここまで新型MacBook Proのスペックについて紹介してきました。ここからはMacBook Pro 14/16インチは結局どんなノートPCなのか、他社製のCPU・GPUとの比較や他社製ノートPCとの比較も交えながらお伝えしていきます。

“性能×省電力性×携帯性”で選ぶなら最強!?

 YouTubeや各種メディアで今回のMacBook Pro 14/16インチは最強!という言葉をよく目にしますが実際のところどうなのか、結論から言うと”最強ノートPC”の一言に尽きるのではないかと思います。

 今回のMacBook Pro、実は言うと性能、省電力性、携帯性、必ずしも全てNo.1というわけではありません。性能だけを追い求めれば他に選択肢もありますし、省電力性や持ち運びやすさでは昨年発売のM1搭載MacBookに軍配が上がります。それなのに何故”最強ノートPC”なのか、それは全てのスペックを高いレベルで実現しているからです。

 つまり、皆がノートPCに求めるトップクラスのスペックをバランスよく一つの筐体に詰め込んだ。そこに価値があるということです。あちらを立てるとこちらが立たぬノートPCですべてを高いレベルで実現するのは至難の業ですからAppleの高い技術力が伺えます。

 というわけで、ここからはその高いレベルというのが如何ほどなのか性能、省電力性、携帯性の3つの観点に分けてそれぞれ見ていきましょう。

何と言おうと性能こそ正義!? M1上位の実力!

https://www.apple.com/jp/newsroom/2021/10/introducing-m1-pro-and-m1-max-the-most-powerful-chips-apple-has-ever-built/ より引用(2021/11/20)

 まずは何といっても性能でしょう。ここでは主にCPU性能とGPU性能、そしてそれらの総合性能の順に紹介したいと思います。残念ながら学生の私たちに実機や比較対象を用意しての検証は厳しいですが、ネット上の情報や各種IT系メディアの記事を参考に検証していきたいと思います。

 今回スコアを引用させていただいたのはCPU-Monkey , GPU-Monkey , Geekbench Browser , GFXBench 5.0です。余談ですが、日本であまり出回っていないチップのベンチマークや古いチップのベンチマークも見つかるのでよくお世話になっているサイトたちです。比較もしやすいので皆さんもぜひ使ってみてください。

 まずはCPU性能の比較です。今回はCinebench R23とGeekbench 5のスコアを使用して比較します。なお、Apple Mシリーズのチップとその他のCPUでは測定環境のOSや命令セットが異なるため、必ずしもスコアだけで性能評価できるものではないことにご注意ください。

 今回のM1 Pro/Maxに対する比較対象は次の表の通りです。おそらく今後競合となるであろうIntel第12世代モバイルプロセッサーやZen4 Ryzenは登場していないので、その代わりとしてデスクトップ版の最新CPUを掲載しています。モバイル版はデスクトップ版CPUよりスコアは低くなる傾向にあるので参考程度にとどめてください。また、現状Intelのモバイル向け最上位となるCore i9-11980HKについては有力な情報が見つからなかったので今回はCore i9-11950Hの情報を採用しました。同様の理由から現行の最上位の代わりにCore i7-1185G7、AMD Ryzen 9 5980HSの情報を採用しています。

メーカーモデル
AppleM1 Max(10コア Firestorm x8 + Icestorm x2)
M1 Pro
(10コア Firestorm x8 + Icestorm x2)
M1
(8コア Firestorm x4 + Icestorm x4)
IntelIntel Core i9 12900K(デスクトップ16コア P-core x8 + E-core x8)
Intel Core i5 12600K(デスクトップ10コア P-core x6 + E-core x4)
Intel Core i9-11950H
(8コア)
Intel Core i7-1185G7
(4コア)
AMDAMD Ryzen 9 5950X(デスクトップ16コア)
AMD Ryzen 9 5980HS
(8コア)
AMD Ryzen 7 5800U
(8コア)

 というわけで結果を見ていきましょう。Cinebench R23は基本的にCPUの性能のみを測定するのに対し、Geekbench 5はCPU性能だけでなくメモリの性能によってもスコアが変動します。その点にも注意してスコアをご覧ください。

Cinebench R23 – シングルコア
Geekbench 5 – シングルコア
スコア合計 – シングルコア
Cinebench R23 – マルチコア
Geekbench 5 – マルチコア
スコア合計 – マルチコア

 皆さんいかがでしたでしょうか。結果を見てみるとCPUの構成が同じこともあってM1 ProとM1 Maxのスコアはほぼ同じになっているのが分かるかと思います。

 では他社製CPUとも比較してみましょう。結果を見ていくとシングルコア性能、マルチコア性能のいずれも最新のデスクトップ版Intel Alder Lake(型番が12—となっているCPU)が最も優れているように見えます。ですがM1 Pro/Maxも旧世代のCPUをシングルコア性能で負かしているあたりモバイルCPUとしては驚異的な性能を発揮しているといえるでしょう。

 ちなみにデスクトップCPUとの比較で言うと大体シングルコア性能は前世代のCore i5(Core i5-11600K)と同じくらい、マルチコア性能は少し高いくらいになっています。しかし、Intel Core i5 12600kとの比較では、同じ10コアでM1 Pro/Maxのほうが高性能コアが多いにもかかわらず総合スコアで負けてしまっています。これは相手がデスクトップCPUとはいえ少し残念でした。とはいえモバイルCPUながら旧世代ミドルクラスのデスクトップCPU以上のスコアを記録しているというのは素晴らしい事だと思います。

 次にスコアの傾向に注目してみましょう。CPU単体の性能を見るCinebench R23ではM1 Pro/MaxとIntel Core i9 11950Kはほとんど同じスコアを記録していたのに対し、メモリも含めた性能を測定するGeekbench 5ではM1 Pro/Maxが優位に立っています。この傾向は他のCPUと比較した場合にも見られるので、高速なメモリの効果とメモリまで一体で設計できるApple Siliconの強みが現れているといえるのではないでしょうか。

 ただし注意が必要なのはApple Siliconにネイティブ対応していないソフトをRosetta 2で動作させる場合、性能が2~3割程度低下することです。ですがApple Siliconが世に出回って1年が経ち、一般に有名なソフトはApple Silicon対応版をリリースしているので、個人的にはあまり大きな問題ではなくなったようにも思います。もしApple Silicon Macの購入を検討されるなら、ご自身がメインで使っているソフトがApple Siliconに対応しているか確認することをお勧めします。

 それでは今度はGPUについてみていきましょう。今回比較に使用するのはFP32(単精度浮動小数点)演算性能とGFXBench 5.0(Aztec Ruins Normal Tier Offscreen)のスコアです。FP32は純粋な演算性能、GFXBench 5.0は3Dグラフィックスの性能の指標になります。

 通常GPUの性能比較にはゲーム系のベンチマークを使用することが多いですがMacOSでは多くのゲーム系ベンチマークが動作しませんので今回は使用しません。またGeekbench ComputeのスコアはGeekbench Browserで調べた結果、スコアのばらつきが大きく信頼のできるスコアが見つからなかったため今回は採用しませんでした。なお、比較対象は次の通りです。

メーカーモデル
AppleM1 Max(32コア)
M1 Pro
(16コア)
M1
(8コア)
IntelIntel Iris Xe Graphics
NVIDIANVIDIA Geforce RTX 3090(350W)
NVIDIA Geforce RTX 3070(220W)
NVIDIA Geforce RTX 3080 Laptop(120W)
NVIDIA Geforce RTX 3050 Ti Laptop(50W)
AMDAMD Radeon RX 6900XT(300W)
AMD Radeon RX 6800M(145W)
AMD Radeon Graphics
GPUの消費電力はメーカーが提示する基本的な消費電力とし、消費電力が選択可能なGPUについてはデータが見つかったもののうち平均的な消費電力のものを採用している。

 というわけで結果を見ていきましょう。FP32の処理を多用するソフトを使われたり、浮動小数点の計算を多用する科学計算やシミュレーションを行う方はFP32の性能にも注目です。一方で他の処理やバスがボトルネックとなる一般的なソフトではFP32の性能差ほど処理速度に差が現れることはあまりありません。そういった一般的なソフトを使われる場合はGFXBenchのスコアのほうが参考になると思われます。

 ちなみにAppleが発表スライドで比較対象にしていたのはRTX 3050 Ti LaptopとRTX 3080 Laptopです。RTX3050Ti Laptopはモバイル向けローエンド製品、RTX3080 Laptopはモバイル向けハイエンド製品となります。

 いかがでしょうか。M1 Maxに着目してみると、FP32では対抗馬であるRTX3080 Laptop GPUにダブルスコアに近い差をつけられていますが、3Dグラフィックの性能を測るGFXBenchではFP32性能の差を埋めて見事に追いついているのが分かるかと思います。さすがにデスクトップ版ミドル~ハイエンドには及ばないまでも、3Dグラフィックの処理では現状最高峰のモバイルGPUに並ぶ性能を発揮しているというのは素晴らしい結果でしょう。

 この傾向は実はAMDのRadeon(RDNA2)とNVIDIA Geforceとの比較でも言えることで、単純なFP32の性能の差を他の要素で補い、場合によっては同等レベルの快適性を実現しています。ではどうしてApple M1 Pro/MaxとAMD Radeon(RDNA2)はFP32の性能差を埋めることができているのか。私としてはチップの内部バスの高速化が寄与していると考えています。(RTX30–シリーズのFP32性能が大抵の処理ではオーバーパワーなのも一因ではあると思うが)

 バスと聞いて、道を走っているあの四角いバスを想像した方もいるかと思いますが、今回の話に出てくるバスとはちょっと違います(ちなみに”bus”で綴りは一緒)。ここで言うバスとはコンピュータ内部でデータをやり取りする道や仕組みのことを指しています。このバスが高速であれば処理に必要なデータがすぐに運べるので処理の効率も良くなります

 M1シリーズのチップはメモリとチップがすぐ近くに配置されていて、そのメモリ自体も高速です。また、AMD Radeon(RDNA2)ではCPU製造のアイデアとノウハウを生かしInfinity Cacheという高速な或る種のメモリを搭載しています。これらのメモリは物理的にGPUとの距離が近く、読み書きのスピードも速いので先述の通り処理が効率的に行えます。

 今回のM1 Pro/Maxはこのような工夫によってFP32では敵わずとも、競合の製品に劣らない3Dグラフィック性能を実現していると考えられます。FP32のような絶対的な計算量を増やすにはコストと消費電力が必要であり、モバイル用途を視野に入れたノートPCではその2つが増えることは好ましくありません。そういった視点から見ると、こういった工夫は非常に重要なポイントになっていると言えますね。

 ここでまた1つ注意点があるのですが、Appleが推奨するMetalというAPIを使用していない場合、1割前後の性能低下が見られる場合があります。Open CLやOpen GLを使用したソフトを使われる方は、言うまでもないかもしれませんが注意が必要です。Appleさん、また正式にサポートしてくれないかなぁ~

Open GLやOpen CLは正式サポートしていないのでMetalより処理は遅くなる

次ページ : MacBook Pro 14/16の総合性能は如何に!?

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